Positive感情とは? Positive感情促進策、測定方法

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Summary

Positive感情はウェルビーイング情報技術(IT)にとって極めて重要な要素である。本稿では、Positive感情に纏わる基礎理論を俯瞰する。Positive感情は、それ自体が促進される対象であるというより、ある特定の活動の結果と考えられる。そこでその活動を設計する上での要点を解説する。最後にシステム上でPositive感情を測定する方法として、当プロジェクトの3研究室の技術を紹介する。


Positive感情とは?

Positive感情とは、喜びや幸福感等の肯定的な感情のことである。勿論、Negative感情というものもある。長期に渡って心理学ではNegative感情を研究に選んできた。これはNegative感情の方が量も種類も多いからだと言われている。また、精神医学の分野では、今でも治療ということに焦点を当てるため、障害の原因となるNegative感情の方を研究する流れが多い。加えて、Positive感情は感情の弁別が難しいことも指摘されている。


PERMA

PERMAはウェルビーイング状態とはどんな状態であるのかを示す概念である。この中で、ウェルビーイング状態をつくる要素の一つとしてPositive感情という文言がある。PERMAのPositive感情とは、嬉しい、面白い、楽しい、感動、感激、感謝、希望等である。Positive感情自体についての話ではないので頁を改めた。参考にしてほしい。


拡張-形成理論

心理学会で、Positive感情の研究を大きく進めた理論に拡張-形成理論がある。この理論は米国のバーバラ・L. フレデリックソンが提唱した。何故、拡張-形成理論と呼ぶかというと、Positive感情は人間の創造性を拡張し、心理的なリソースを形成するからである。Negative感情は、人間が進化の過程で生物としての危機を逃れるため、脳が強く緊急避難行動を促す感情である。危機に遭遇した場合、逃げる、闘う、(病気の場合)休むなどの行動が必要になる。一方で、Positive感情は、そうした差し迫った危機がない場合に、人間の創造性を高める役割があるという考え方である。

彼女によると、現象学的に区別可能な10の感情は、喜び、感謝、安らぎ、興味、希望、誇り、愉快、鼓舞、畏敬、愛である。(これは通説であるが異論も当然ある。)

加えて、この理論の有名な点は3:1の法則である。Positive:Negative比率が3:1を超えると、大きくPositiveに傾く。逆も真なりで、比率が1:3を超えると、大きくNegativeに傾き、生活に支障をきたすまでになるという。

以下のページにより詳細な記述がある。


興奮・衝動 / 親和・沈静システム

Positive感情の分類として、ポール・ギルバートとコーデンは興奮と衝動システムと親和と鎮静システムを挙げている。「興奮・衝動システム」は誇り、熱中、欲望といった心の状態や、達成、消費、所有といった意欲を生む。「親和と鎮静システム」は平穏、思いやり、愛といった心の状態を生み出す。個人的にはこの分類はPositive感情に留まらず、Positive・Negativeと直行する人間の感情の働きだと考える。現在のシステムでは、主に購買行動を促すために、興奮・衝動システムに強く働きかける傾向があるが、逆にこれを鎮静するシステムがないと、人々は疲れてきてしまうのではないだろうか。


Positive感情を促進するには?

Positive感情を促進するためには、Facebookを止めて、オンラインゲームに熱中することである・・・というのは言い過ぎかもしれない。SNSについては、Positive感情を促進する効果があるという報告もある一方で、逆の効果があるとする調査研究もある。

Positive感情は、人間が何か刺激を受けた結果として想起されると考えられるので、Positive感情を直接促進するというよりは、それを促す刺激を設計することになる。例えば、脳波を操作するような装置でPositive感情を直接想起させるというのでは技術の範疇を超える。勿論、倫理的にも許容されない。 このような前提で、以下に設計上、留意する点を列挙する。

  • Gamification

    ゲームについてはガチャ/ルートボックスの仕組みが社会的な批判にさらされている。ガチャ/ルートボックスは、ゲーム内で対価を支払って一定の確率で利得が得られる仕組みである。射幸心を煽る方法論には批判が多い。

    射幸心を煽るものでなくても、ゲームは人間の原初的な技能を鍛錬し、そこから心理的な報酬を得るものだとする考え方がある。Raph Kosterによれば、暴力で敵を倒す、勧善懲悪、厳格な階層性、類似性による敵味方の判定など、オンラインゲームで頻出する要素は人間が狩りをしていた時代の技能だということである。彼の著書は日本語訳もあるようなので下記に紹介する。

    ゲームでいかにポジティブ感情を促進するかということについては、いかに面白くするかという視点で書かれた実践的な文書がある。Web上で見つけたので興味のある人のためにリンクを掲載する。

    人間のある特定の行動について、分かりやすく成功・不成功を表示するゲームという仕組みは、単に原初的な技能を鍛えるもの以外にも用途があると考えられる。ゲームには大きな可能性がある。


  • ピーク・エンドの法則

    ピーク・エンドの法則は、人間が過去の感情を思い起こす際に、最も印象的であった時機と最後の時機のことを思い出しやすいという法則である。人間の記憶の仕組みに関連している。ある実験では、不快な騒音の最後に若干ましな騒音を聞かされた人は、不快な騒音を継続して聞かされた人よりも、例え不快な騒音が流される時間が多少長かったとしても、継続して聞かされた人よりも不快感を記憶しにくいという結果になった。

    ピーク・エンドの法則を実証したのは、PERMAを提唱したダニエル・カールマンである。

    ユーザを欺くわけではないが、心理的疲労のある作業をユーザに強いざるを得ない場合は、その次に心理的快感のある作業を行わせると、心理的疲労を記憶しにくいと考えられる。


  • 真正性&適切な難易度

    ここでいう真正性とは、Positive感情を促進する要因に嘘、偽り、誇大がないことを本人が確信しているということである。例えば、ある健康バロメータシステムがユーザの健康状態について当人に知らせるとしよう。ユーザが健康バロメータシステムに信頼を置いていれば、健康であるという認定をシステムから受け取ることは嬉しさの喚起につながるであろう。一方、ユーザがシステムに信頼性がないと思っていれば、ユーザは同じ情報であっても嬉しいとは思わないであろう。

    真正性に纏わる話題として、ネガティブ感情を完全に排し、常にポジティブに考えるのが良いとする「ポジティブシンキング」という考え方がある。これは、実証されたものではないので飽くまで考え方である。この考え方には批判もありながら、賛同する人も多い。システムが真実でない情報を与え、ユーザのポジティブ感情を促進することには論理的に問題がある。但し、例えば報道におけるフェイクニュースの問題を見ると、ユーザの要求と真実性が相反している場合の判断は確立していない。

    真正性に関連した話題として、適切な難易度の設定が Positive感情の促進には重要と考えられる。簡単すぎる課題を達成しても、Positive感情は高まらない。Positive感情を高めるためには、ユーザに対し適度なストレスを設定し、ユーザの行動によってそこから解放させ、報酬を与える必要がある。



Positive感情の測定方法

Posive感情を測定する方法は様々に開発されている。広く普及している方法は質問票を用いたものが多い。ここでは当プロジェクトの研究を3つ紹介する。

質問票を用いた測定方法について、下記にWeb上で情報を入手できるものを列挙した。


Negative感情を測定する方法 【▶説明】


Positive感情を測定する方法 【▶説明】


ウェルビーイング情報技術(IT)とは? 関連コンセプトのマトメ