マインドフルネス とは?その測定方法と促進方法、システム化に向けた調査

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本用語集は、私家版として位置づけられたものであり、 従って、当学、或いは当プロジェクトの見解を代表するものではありません。 内容については正確を期しておりますが、 読者の方が本用語集を元に行った判断、行動についての責任を負うことはできません。 本用語集には科学論文のような厳密性もありません。 査読も受けていません。 誤解、思い違い等、多々あるものと推測されます。 内容の真偽については読者の方が各自ご考察をお願いします。


Summary

本稿では、まずマインドフルネスの基礎的概念及び応用プログラムを紹介すると共に、脳科学的なマインドフルネスの状態について概観する。続いてマインドフルネスを支援するシステム例を紹介する。最後に、マインドフルネスの測定方法として、システムの実例を紹介する。


マインドフルネス(mindfulness)とは?

マインドフルネス(mindfulness)は、「今、この瞬間の体験に意図的に意識を向け、評価をせずに、とらわれのない状態で、ただ観ること」(Wikipedia)と言われる。仏教では元々「瞑想」という修行法があり、西洋的なマインドフルネス(mindfulness)の主流的な考え方は仏教の瞑想法の一種であると言える。日本においては、逆輸入されてきた概念である。勿論、源流はインドにあり、日本には1000年以上前に輸入されてきたものである。トーマス・ウィリアム・リス・デイヴィッズが、仏教の正念の訳語として、マインドフルネス(mindfulness)という単語を始めて使った。

仏教では、瞑想法だけを取り出し、心身の健康に役立てるという発想はなく、解脱、即ち自我への執着からの解放を目的とし、その一つの具体的方法として瞑想を位置付けている。当然、仏教関係者からは自我という迷妄から解放されるということなしに、瞑想法だけを取り上げるマインドフルネス(mindfulness)には批判がある。

マインドフルネス(mindfulness)は、心を無にした状態と考えると分かりやすい。日常生活においては我々は常に何かを考えている。これに対してマインドフルネス(mindfulness)は何も考えない状態である。皆さんは今、本稿を読。。。んでおり、本稿の内容について考えていると思うが、一旦本稿を読むのを止め、何も考えないというのをやってみてほしい。・・・何も考えないことをしようとすると、身体的な感覚だけが残る。これがマインドフルネス(mindfulness)である。


マインドフルネスの条件

  • non-judgmental(判断しない)

  • present-centered(現在を中心とする)

マインドフルネス(mindfulness)では、non-judgmental(判断しない)、present-centered(現在を中心とする)の2つが特に強調されている。non-judgmental とは、今起こっていることに対して善悪、良い悪いといった判断を行わないという意味である。present-centeredは、過去に起こった事象やこれから発生すると思われる事象ではなく、現在の状態に注意を向けるということである。


MBSR(Mindfulness-based stress reduction)/MBCT(Mindfulness-Basmbsred Cognitive Therapy)

マインドフルネス(mindfulness)が大きく注目されるようになった源流を辿ると、1979年にマサチューセッツ大学医学部のジョン・カバット・ジンがマインドフルネス・ストレス低減法(MBSR)を開発したことに行きつく。MBSRは認知療法と瞑想法を合わせて開発された。認知療法は、個々人が持つネガティブな固定観念を緩和することにより、症状を改善する手法である。MBSRはグループ形式で行う8週間のプログラムで、2時間のセッションを週1回行うほか、参加者は期間中、毎日瞑想を行う。MBCTはMBSRをもとに、うつ病の再発予防を目的として開発されたプログラムである。MBCTはランダム化比較試験によって3回以上の再発を繰り返しているうつ病の再発抑止に有効であ るという実験結果が報告されている。ランダム化比較試験は、対象者をランダムに抽出し、治療群と偽薬群に分け、評価者にも対象者がどちらの群に属しているかが分からない形式で行う試験である。(Wiki) MBSR/MBCTは下記のPDFに詳しく解説されている。


マインドワンダリング(mind wandering) & マインドレスネス(mindlessness)

マインドフルネスの対義語として、マインドワンダリングとマインドレスネスという言葉がある。マインドワンダリングとは、現在の活動ではなく他のことの思考に注意がそがれることである。一方、マインドレスネスは不注意のことである。因みに研究結果によるとマインドレスネスには不注意以外に、自己不承認と表現抑制の効果がある。(マインドレスネス尺度の実用化に向けた検討 中川 裕美神戸学院大学人文学部)

私見ではあるが、マインドフルネス、マインドレスネス、マインドワンダリング、没頭(フロー)を注意力と集中力の2軸で分類した。尚、本件については他に全く根拠がない私見であるので、留意してほしい。(読者の方で上の4つの明確な違いについてご存知であればご教示頂きたい。)

  • マインドレスネス ・・・ 所謂、不注意な状態。注意力が散漫で、集中力もない。
  • マインドフルネス ・・・ 特定の事象に集中せず、尚且つ心を配っている状態。
  • マインドワンダリング ・・・ 今の活動と違うことを考えている状態。注意力も集中力も中途半端である。
  • 没頭(フロー) ・・・ 一つのことだけに集中し、他のことが全く気にならない状態。


筆者個人としては、心をカラにし注意を張り巡らせる状態と、逆に一つのことに集中し他のことを考えない状態は良いことであるが、どっちつかずの中途半端な状態が良くないことだと理解した。(正しいだろうか)

没頭(フロー体験)については別稿に記載した。合わせて参考にしてほしい。


考えることの悪影響

考えないこと(マインドフルネス)の好影響の一方で、考えることの害悪についての調査結果もある。trackyourhappiness.orgの調査では、今現在やっていることと別のことを考えると、幸福感が低下するという報告がされている。この内容は別稿に記載したので参考にしてほしい。


脳科学とマインドフルネス

DMN(Default Mode Network)の活動抑制

DMN(Default Mode Network)は、人間が特に活動していない時、アイドリング状態の時に活性化する脳内のネットワークである。言い換えると、過去や未来のことをボンヤリ考えている状態、或いは雑念と言っても良い脳の働きである。この働きのお陰で、過去を整理し、未来の予測ができるようになる一方で、過剰に働かせてしまうと、不安に捕らわれることが分かってきた。

思考活動を停止し、更にDMNをも休ませることがマインドフルネス状態と考えることも出来る。

脳科学やDMNとマインドフルネスとの関係は下記の記事に記載がある。


マインドフルネスを促進するには?

アプリケーション例

マインドフルネスを促進するためのアプリケーションは、大きく3つの型に分類できる。システムが利用者への働きかけを一方的に行うもの、指導者による体験プログラムを支援するもの、システムが利用者とやり取りしマインドフルネスを促進するものの3つである。


システムが利用者への働きかけを一方的に行うもの

例えば、音楽を流す、リラックスできる音を聞かせる、画像や動画を表示する、或いはプログラムに基づいたユーザへの指示音声を流すなど、ユーザへの働きかけを行う。課題をユーザにリマインド通知する機能を持つものもある。実装が簡単なことから多数のソフトウェアが発表されている。効能をはっきり謳っているものもある一方で、全く効能に触れていないソフトウェアもある。


指導者による体験プログラム支援

指導者付きのプログラムをオンラインで行う仕組みである。


システムが利用者とやり取りしマインドフルネスを促進するもの

この類型では、システムは利用者からの情報を取得し、動的にコンテンツを変更する。利用者からの情報は、最も基本的な場合には、利用者に質問を投げかけ利用者がそれに答えることで取得される。或いは利用者がボタンを押し、プログラムを進めるシステムもある。高度なシステムでは、センサから利用者の生体情報を取得するものもある。


設計上の留意事項

マインドフルネス促進のためのシステム設計上の留意点のいくつかが、書籍『ウェルビーイングの設計論』(ラファエル・A・カルヴォ, ドリアン・ピーターズ著 ; 木村千里 [ほか] 訳; BNN新社, 2017.1) に紹介されている。

  • 利用者の体験を妨げぬよう、利用者自身がシステムを調整できること
  • 注意を引き付ける仕組みを過度に盛り込まないこと
  • 視覚以外の聴覚や触覚のフィードバックを活用すること
  • 過度な目標設定を行い利用者を追い立てないこと
  • 設計者が自らマインドフルネスを体験してみること

詳しくは書籍を参考にしてほしい。


マインドフルネスの測定/評価方法

MAAS(Mindful Attention Awareness Scale)

MAASは15項目の質問票調査である。2003年に開発された。日本語版もある。日本語版MAASの開発については下記から研究者の論文が参照できる。

参考までに、下記に日本語版MAASの15の質問を掲載した。

FFMQ(Five Facet Mindfulness Questionnaire)

FFMQは39項目の質問調査である。全く新規に開発されたものではなく、MAASを含め、既存の測定方法を統合したものである。2006年に開発された。「観察」、「描写」、「意識した行動(注意)」、「判断しないこと(アクセプタンス)」、「反応しないこと」の5因子から構成されている。詳しい質問項目については、下記のPDFに記載がある。


脳波による測定

生体情報でマインドフルネス状態を測定する方法として、一つには脳波が使われる。瞑想熟達者ではγ波や後頭部からのα波に大きな影響が出ることが分かっている。


Interaxon社 Muse

一般消費者向けの脳波計として Interaxon社 Muse がある。同製品は脳波を計測するEEGセンサーが7つ(額×5+耳×2)装着されている。スマホにアプリをインストールし、Bluetoothペアリングして使う。計測された利用者の精神状態は、Active 活発、Neutral 中立、Calm 静寂の3つの状態の時間数として表示する。Calm状態の時にはアプリが「鳥のさえずり」を再生し、Active状態の時には「風の音」をアプリが聞かせる。更に、MuseはSDKが公開されており、Android 及び iPhone で独自のアプリを開発することができる。

下記に、前述の Muse を使い、瞑想法ごとの脳波を調べた結果がある。


凸版印刷 瞑想ポッド

凸版印刷は、業務遂行能力向上のため、心拍や脳波などのセンシングによる効果測定を連携させた瞑想ポッドを提供している。ポッド本体の価格は430万円(輸送・設置費用除く)。センシング費用は150万円。


NeU社 ストレスマネージャ

NeU社のストレスマネージャは、ヘッドバンド型の心拍及び脳活動センサから前述のDMN(Default Mode Network)の活性度を推定し、スマートフォンアプリを通じ利用者のマインドフルネス実践を支援する。



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